調査・整備

羅臼岳(羅臼温泉ルート)、最後の登山道整備はすでに冬山でした。

一昨日から降り積もった雪は標高500mから登山道を覆い隠し、多いところでは30㎝のラッセルを強いられました。
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森林限界を超えると完全に冬山

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今日は環境省レンジャーと警察関係者が同行し、地名の確認、遭難しやすい場所を共有するなど情報交換できました。
羅臼に2年半赴任していた環境省レンジャーは今月で移動することになり、送別山行も兼ねてます。
彼とは知床岬巡視や登山道整備で何度も同行しました。雪の羅臼岳が良い餞別になったでしょう。
今日は厳しいラッセルに11時間行動、大変お疲れ様でした!
新天地でのご活躍をお祈りしております。

羅臼温泉ルート登山道情報
登山シーズンもほぼ終わり、今日は「屏風岩迷い込み防止ロープ」と「お花畑分岐標識」を撤去しました。
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この屏風岩迷い込み防止ロープは撤去しましたので、羅臼に下山する際はこの標識から右方向へ下りてください。

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今夏から新調したお花畑分岐標識ですが、雪圧で折れてしまうので着脱式になっています。
この標識は今日撤去しました。(さっそくヒグマに齧られていました笑)

ここから岩清水までの直登ルートはコースロープが数か所切れて不明瞭になっています。
どのみちこれからは雪で登山道を辿ることは難しいので、今後は地図とコンパスでルートを定めてください。

今後は明るい時間帯は11時間を切ります。
日の出から日没まで歩いてもこのコース往復は厳しい季節ですので、登山計画は慎重に立ててください。

ここ一週間は地質調査のサポート業務で沢歩きの日々でした。
例年なら寒さと水の冷たさに震えながらの辛い時期ですが、今年は天気にも恵まれ気温も20℃前後と快適な沢でした。

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樋のようなナメ滝

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懸垂下降。どの沢も水量は多めでした。

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恐竜の卵のようなノジュール。化石が残っていることが多い。

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サケマス遡上が多いので、川全体に魚の腐臭が漂いあちこちにヒグマの食痕。

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地層断面を調べるため、8/24に起きた海岸町の地滑り現場へ登ってきました。
間近で見ると10m以上の破断面は恐ろしいですね。

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最後の現場は英嶺山の四ツ倉沼

これで2009年から足掛け8年、延べ日数95日に及んだ地質調査も終了です。
沢登りや藪漕ぎを中心に、シーカヤックやスキーを使ってのアプローチはなかなかタフな調査でした。
地質屋としても山屋としてもハイレベルな研究者に同行してとても勉強になりました。
地質学に関しては最後まで難しくて理解できませんでしたが(笑)

来年には知床の新しい1/50000の地質図が出来上がる予定です。50年ぶりの更新とのこと。
50年前にこのような険しい調査をして地質図を作った方々には驚嘆の念を禁じえません。

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8年に渡る踏査の軌跡

7/1に羅臼岳羅臼温泉ルートの登山道整備を環境省、林野庁、羅臼山岳会合同で実施しました。

羅臼温泉ルートの残雪状況ですが、例年よりやや少な目です。
ただ、例年通りの場所にはまだたっぷり雪が残っていますので、しばらくはアイゼン必携ですね。
道がわかりにくい箇所にはピンクテープやロープを張って登山道を明確化してきました。

泊場上の誘導ロープ張り。ここは例年道迷いが多発している箇所です。
誘導ロープに沿って登れば小沢の入口に到達できます。
距離は短いですが、急斜度なので滑落の危険があります。
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油断しているとレンジャーでもこの通り、滑ります。
この直後、写真撮っていた私にぶつかったのは内緒です。

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泊場雪渓上から屏風岩まではまだ雪渓が多く登山道が不明瞭なので、ピンクテープで目印を付けています。

屏風岩下部では、例年と同じくサシルイ沢に迷い込まないようにロープを張っています。
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羅臼へ下山する際は、このロープを越えずに右方向へ下りてください。

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屏風岩の大雪渓。雪解けの時期だけ滝が出現します。
ここは斜度があるので、雪の固さによっては10本爪のアイゼンが必要な箇所です。

お花畑~岩清水までの大雪渓も距離300m以上あります。ここはガスって視界がないと迷います。
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誘導ロープに沿って登れば、登山道へたどり着けます。
羅臼平へトラバースするルートにも誘導ロープを張っています。
*絶対にロープをつかんだり引っ張ったりしないでください。

中腹では笹狩りを実施。暑さで倒れそうになりました。
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この日は炎天下の中11時間労働でしたが、若き精鋭メンバーで仕事もはかどりました。

*羅臼温泉ルートはアイゼンなど十分な装備と、時間に余裕をもって行動しましょう。下山だけでも5時間以上かかります。

今年も環境省による海岸トレッキングルート巡視業務のサポート約として、知床岬まで往復3日間かけて歩いてきました。

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奥はタケノコ岩

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巨岩帯

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ペキンの鼻から岬方面を望む

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ヒグマをやり過ごす。人を見ても逃げないヒグマが増えています。
3日間で延べ10頭と遭遇。

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テン場にて。食料はフードコンテナに保管が基本です。

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懸垂下降。
残置ロープは傷んでいる可能性もあるので使用しない。

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カブト岩の下降。ここも年々斜面の崩壊が進んでいる危険個所。

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岬灯台にて。
とんでもない強風で滞在1分ほどで退散しました。

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知床岬は横殴りの風雨、これぞ知床の洗礼。

へつりや高巻きなど難所については、例年と大きな変化はありませんでした。
ただ、モイレウシ南側の崖が一部崩落しており、岩登りの際に危険度が増しています。
しっかりとロープで確保する必要がありますね。

半島先端部の自然は厳しく、重荷を背負っての石浜歩きは体力、足の負担も大きい難ルートです。
ヒグマとの遭遇は当たり前で、突然至近距離の藪から出てくることもあります。
ただ、日本の極地と言える知床岬へ到達したときの達成感はきっと生涯忘れることのできない思い出となるでしょう。

一度は目指してほしい知床岬への路です。(特に体力のある若者!)

知床岬へのトレッキング情報はルサフィールドハウスにフィードバックしています。
しっかり事前準備と情報を仕入れてから出発してください。

知床半島先端部利用の心得

ここ数日は地質調査のサポート業務でした。
昨年までに行けなかった沢や、再度サンプルを採取しなければならない地点など、補足的な調査です。

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ガスガスの知床峠付近でハイマツ漕ぎ

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根気のいる火山灰調査

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雪渓を利用して天頂山へ。久々の羅臼岳がお目見え。

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天頂山火口湖。5月下旬から雪解けはほとんど進んでいませんでした。

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サシルイ川源頭を再訪。昨夏は1泊で沢から詰めたが、今回は登山道から雪渓を利用して日帰りアタック。

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シーズン初の沢は、カムイワッカ下流部へ

ハイマツ、雪渓、沢、登山道とバリエーションに富んだ数日間でした。

おまけ
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知床連山にかかる滝雲。
羅臼は雨で8℃、ウトロは天気も良く16℃。
今日は夏の知床らしい天気でした。